ここではオウンドメディアの作り方について、中小企業の方向けに説明します。オウンドメディアというと、記事作成に注意が向きますが、それ以前に検討することも数多くあります。何をしなければならないか、ここで頭を整理して下さい。順序は、1.既存サイトの分析、2.戦略の企画、3.実行プランの作成と、大きく3つありますが、更に細かく15のステップに分けて、実践的に解説しました。
既存サイトの分析。
まず最初に行うべきは、既存サイト(ブログ)の分析です。なぜなら、
- 既存サイトをオウンドメディアに、衣替えするのか?
- それとも新規URLを、立ち上げるべきか?
大きな方向性を、決める必要があるからです。
次のようなステップで、チェックして下さい。
ステップ1: 自社ドメインか、他社ドメインか?
オウンドメディアを作る以上、自社ドメインは必須です。無料ブログのような他社ドメインでは、コンテンツ(記事)が、自分の資産になりません。
無料ブログは表面上、自分のために記事を書いている気になりますが、利用規約を読めば、記事の利用権は運営者にある場合がほとんどです。運営者の承諾なしに、転載できるケースは稀でしょう。
アクセスが少なくコンテンツの資産価値が低い時は気づきませんが、アクセスが増えてくれば、次のような形で収益を生み出します。
- 「広告を表示しませんか?」という依頼が来る。
- 「本にしませんか?」という依頼が来る。
このようにコンテンツが価値を持つに至った時、コンテンツの所有権がなければ、自由に活用することが出来ません。
また無料というのは、サービス提供者の一存で、全てが消える可能性があるということです。そんなリスクを抱えて、進むべきではありません。このような意味でも自社ドメインは、必須です。
ステップ2: ドメイン名とオウンドメディアの関連性。
既存サイトのドメイン名が、これから構築するオウンドメディアの内容と大きく異なるのであれば、新しいドメインを立ち上げることも検討対象です。ドメイン名とは、このブログで言えばweb60.co.jp のことです。
ドメイン名はメディア内容と関連した表記の方が、SEO対策上は好ましいです。ただどの程度SEOで重視されるかと言えば、評価項目の中の1つ程度と考えるべきです。
ドメイン名はサイト全体を包括しますから、ドメイン名をあれこれ工夫しても、個別ページの表示順位に大きな影響を与えるとは思えません。(注: パーマリンクの話でなく、あくまでドメインの話です)
またドメインは新しいものより、取得から年月が経っている方が、SEO対策上有利であることも否めません。
これらを踏まえれば、なるべくは既存ドメインを流用したい。ただ大きく方向性を変えるなら、新規に立ち上げた方が良い、ということになります。
ステップ3: アクセス数とページ内容。
- アクセスの多いページは、どれか?
- そのページの流入路は、自然検索か、ソーシャル化、ネット広告か?
- 上位表示しているキーワードはあるか?
- 上位表示キーワードの、月間検索数はどの程度あるか?
- ページ(記事)内容は、オウンドメディアとして流用できるか?
これらをチェックした上で、オウンドメディアに引き継ぐページがどれ位あるか、考えます。流用できるページ数が多ければ、今のサイトを流用していく方が効率的です。
ステップ4: 既存サイトの被リンク数
今のサイトが数多くの被リンクを持っているなら、新規URLを立ち上げることは、そのすべてを放棄することを意味します。
関連サイトから多くのリンクをもらっているなら、それは良質なリンクであり、SEO対策上のプラス資産です。逆に、無関係なサイトからのリンクが多いなら、それはマイナス資産であり放棄すべきです。
今の被リンクを、数と質の両面からチェックし、引き継ぐべきか否か、判断する必要があります。
ソーシャルからの被リンクについては、どのソーシャルかによって、グーグルの評価は異なりますが、基本的に捨てるべきではありません。SEOの視点だけでなく、アクセスルートを減らすことには、変わらないからです。
特に今のサイトが、ソーシャルを含めたハブの位置を占めている場合、数多くのアクセスルートが既に出来ていますから、URLを新規にするのはお勧めできません。
ステップ5: ハードウェア環境。
次はハードウェア環境のチェックです。オウンドメディアになれば、アクセス数は桁違いに増えます。数十万PVでもアクセスが集中すれば、サーバー側の負荷が増えます。
サーバーの負荷が大きくなれば、それはページの表示速度に影響を与えます。表示速度が遅ければ、それはSEO対策上マイナスです。サーバーを変えることで、表示速度が2倍になることも、珍しい話ではありません。
- 専用サーバーにすべきか?
- クラウド型にすべきか?
- 共用サーバーで済ませるのか?
目指すメディアの規模(アクセス数)に応じて、サーバー環境を整える必要があります。
もちろんこれは、アクセスが増え立時点で考えれば済む話ですが、アクセスが大量になった時点では、記事数も数百になっていますから、そこでサーバーを変えるのは、かなりのプレッシャーになります。
少なくとも数万アクセスの時点(記事数100程度)で、サーバーについてはシッカリ検討することが必要でしょう。
ステップ6: プラットフォーム環境。
オウンドメディアを構築するには、ワードプレスに代表されるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使うのが一般的です。これはひとえに、記事を効率的に管理するためです。
オウンドメディアとして機能させるには、最低でも100ページは必要です。理想を言えば、800ページを目指すべきです。これだけのページを効率的に管理するのは、CMSでなければ不可能でしょう。
タンブラー等のソーシャルを使う方法もあるようですが、やはりワードプレスではないでしょうか。ワードプレスは機能が豊富なので、最初は大変かも知れませんが、拡張性が高いので後になって困ることがありません。ちなみにこのブログも、ワードプレスです。
ステップ7: ページレイアウト。
今のページレイアウトが、そのまま流用できるかどうかも、検討する必要があります。文字数が増えますから、各ページは読みやすいレイアウトが必要です。
カラム数だけでなく、文字サイズ、文字間隔、行間の広さ、画面全体に占めるホワイトスペースの割合、こういったポイントが読みやすさには、大切です。
またこれらは、単に読みやすさだけでなく、メディア全体の印象を左右する点でもあります。
雑誌を思い出してください。高級感のある雑誌は、ホワイトスペースが多いでしょう? ホワイトスペースの割合は、メディアの印象を大きく左右することに、注意して下さい。
ステップ8: フォーマット全般について。
ページのフォーマットにおいても、注意すべき点があります。
各記事を効率よく拡散させる以上、ソーシャルボタンは必須です。
また記事の鮮度を重視するメディアであれば、記事作成日を表示すべきですが、記事を長く読んでほしいなら、作成日は表示すべきではありません。
SEO対策上では、内部リンク、記事のカテゴリー分類、タグの設定にも注意を払う必要があります。
各ページのタイトル直下には、内容の要約文を掲載させるべきです。これは記事を読むユーザーのためであると同時に、Descriptionとして検索結果に表示させるためでもあります。要約文は、タイトルと同等にアクセスアップでは重要になります。
以上ここまでが、既存サイトをチェックする時のポイントになります。この8ステップを踏まえ、既存サイトの衣替えで進めるか、それとも新規に立ち上げるか、まずは判断して下さい。
戦略の企画。
ステップ9: メディア・コンセンプトの明確化。
オウンドメディアは、単に多くの記事を掲載して、アクセスが増えれば済むわけではありません。
広告媒体として機能させるなら、アクセス数だけを考えても良いでしょうが、多くの場合は自社の見込み客を集めることに、目的があります。
リピート訪問 ⇒ 見込み客 ⇒ 注文。この流れを作ることが、オウンドメディアの最終ゴールです。
このために最も大事なのは、メディア・コンセンプトです。各記事を読む中で、運営者に親近感が醸成されるような内容が必要になります。
いかに親近感が重要なファクターかは、こちらの記事で説明してます。
オウンドメディアの代表例として有名な、LIGのケースを解説しているので、シッカリ理解して下さい。
親近感と言うのは、読者が記事を読む中で醸成されるものです。「へぇ~、なるほどなぁ・・・」こういう読後の印象が残れば、役立つサイトとして親近感が生まれます。
「嘘だろう! 面白いなぁ・・・」 こういう読後の印象が残れば、楽しいサイトとして親近感が生まれます。
ですからメディア全体のコンセンプトを明確にして、どんなトーンの記事を作るか、企画することがとても重要です。
ここは見逃す人が多いので、くれぐれも注意して下さい。無機質なウィキペディアのような記事がたくさんあっても、親近感は生まれません。
単に内容だけでなく、記事から伝わるトーン。ここが親近感を生み出す、最大のポイントです。
ゴメンナサイ・・・。しつこい位、繰り返します。単に文字が羅列されれば良いのではありません。重要なのは、記事のトーンです。
トーンを分かりやすく言えば、テレビ東京が放映した池上彰氏の選挙速報を思い出して下さい。
同じ選挙結果の番組でも、ずけずけ歯に衣を着せずに突っ込むから、他局との違いが際立つでしょう?
全く同じことです。そしてこのトーンで、独自のポジションを築けば、同じテーマのメディアが乱立しても、御社は独自のメディアとみなされるでしょう。
ご参考までに言えば、私のこのブログのテーマは、Web集客のアクセス増とコンバージョン増です。ただ大事にしているトーンは、「本質を分かりやすく」になります。
ステップ10: 出口戦略(マネタライズ)。
親近感が生まれたとしても、メディアに出口がなければ、見込み客として囲い込むことが出来ません。
出口を具体的に言えば、メルマガの登録なのか、アプリのダウンロードなのか、無料相談なのか、です。ここはあなたのビジネス特性と、ユーザーが求めるものを、総合的に判断して決める必要があります。
出口をどのように作るかは、次に説明する対象キーワードの選定とも、密接に関係する話です。なぜなら検索キーワードの種類に応じて、ユーザーが求める内容は変わるからです。
メディア全体として、1つの出口に絞るのか、それとも対象キーワードの種類ごとに分けていくのか、これらも検討する必要があります。
ステップ11: 対象キーワードの列記。
なんだかんだと言いましたが、やはりこれが一番、重要ですね。対象キーワードの選定です。企画時に100個程度は、決めておきましょう。
キーワードを決めるには、何よりも対象となるユーザー像が、ハッキリしなければなりません。どんな読者を想定するのか、まずは明確にして下さい。そしてエクセルを使って、対象キーワードを100個ほど列記します。
作業手順としては、まずビッグキーワードを決めます。月間検索数で1万前後が必要です。そのビッグキーワードから、関連する複合ワードを洗い出します。
次に複合ワードを、ミドルワード(月間検索数1000前後)とスモールワード(月間検索数100程度)に分けて下さい。記事を作り始めるのは、スモールワードからです。必ずスモールワードから作り始めて、記事を積上げることが重要です。
スモールワードを優先する理由は、次の2点があります。
1.モチベーション維持のため。
スモールワードは、競争が激しくありません。そこそこの記事でも上位表示する可能性が高いです。まずはスモールワードから始め、上位表示という結果を得て下さい。
もちろん、アクセスは増えません。スモールワードで10個、1ページ目に表示されても、うんともすんとも言わないでしょう。ただアクセス数を欲張ってミドルワードから始めれば、耐える時間は余計にかかります。
まずは自己満足で良いのです。ちゃんと記事を作れば、グーグルが評価することを体感することが、最初のモチベーションを維持させます。
2.ミドルワードで早期に上位表示させるため。
これはあくまで私の経験なので主観も混じりますが、大きなキーワードから攻めた場合は、上位表示に時間がかかっています。
関連するスモールワードから記事を積上げると、その中の1つが自然にミドルワードでも上位表示されるようになります。結果的にスモールワードから攻めた方が、アクセスを増やす期間は短く済んでいます。
ステップ12: 拡散戦略。
戦略企画の最後は、拡散戦略の検討です。
- ソーシャルメディアのフォロワー数、友達数は、どの程度あるのか?
- メーリングリストは、どの程度の登録者数なのか?
- 顧客数は、どの程度いるのか?
- ネット広告に投資できる費用は、どの程度あるのか?
以上のような諸環境を検討して、効率よく記事を拡散させる戦略を考えます。
上記の項目で、ほとんど数がないなら、ひたすら記事を増やすことに専念し、記事の上位表示(自然検索)から得られるアクセスを優先します。
ソーシャルのネットワークがあるなら、ソーシャルを通じて記事紹介し、アクセスを促進させることが出来ます。それは結果的に上位表示の期間を、短縮することに繋がります。
以上、メディアコンセンプトの明確化、出口戦略、対象キーワードの列記、拡散戦略、この4つが戦略の企画では必要になります。
この戦略の企画こそ、オウンドメディア成功の鍵です。そしてここまでくれば、後は実行プランの作成になります。
実行プランの作成。
ステップ13.記事作成と編集者。
記事作成の方法は、4つあります。
- 専門の業者さんに、丸投げする。
- 外部ライターさんにお願いする。
- 社員さんに、粘り強くお願いする。
- 自分で書く。
この4つから選ぶわけですが、その前に重要なのは、編集者を誰にするかです。自分で書く場合は自分ですが、複数のライターさんが関係するなら、必ず編集者が必要です。
編集者の役割は、次のようになります。
- 記事タイトルの作成。
- ライターさんへ記事内容の指示。
- 記事の入稿スケジュールの管理。
- 入稿後のアップロード作業。
- 文字レイアウトの調整、写真等の挿入。
- 記事アップロード後の告知活動。
オウンドメディアを作るうえで、最も重要な役割を担うのは、編集者です。ここはくれぐれも誤解しないで下さい。ライターさんのクオリティーも重要ですが、それ以上に編集者が重要です。
なぜならライターさんの基本姿勢は、受身だからです(もちろん、個人差が相当あります)。
記事のテーマと文字数を教えてもらって、それをテキストに起こすのがライターさんの仕事です。仕事である以上、程度の差こそあれ、記事作成を効率的に行うことを考えます。
指示された内容を淡々とこなすのが、ライターさんだと思ってください。ですので記事のクオリティーを確保するのは、編集者の力に大きく左右されます。すなわち・・・。
- ライターさんに、構成や展開を含め、どこまで細かい指示を出せるか?
- ライターさんと、良いコミュニケーションをとれるか?
- 記事内容の問題を指摘し、修正する方向性を説明できるか?
これらの能力が、編集者には求められます。少なくとも記事を書けない人が編集者をやっても上手くいかないでしょう。
ここでは外部ライターさんの例で説明しましたが、外部業者さんに丸投げする場合なら、編集責任者は誰になるのか。その人に十分な能力があるのか。依頼前に確認する必要があります。
社員さんにお願いする場合も、同様です。職制を通じて強要しても、決してうまくいきません。イヤイヤながら書くのは、苦痛以外の何物でもないからです。社内でオウンドメディアの重要性を共有し、「ヨシ! みんなで頑張ろう!」というキックオフがなければ、決して成功することはないでしょう。
ステップ14.スケジューリング。
オウンドメディアは、構築するのに時間がかかります。無理のないスケジュールを立てて、継続していくことが重要です。
記事作成かかる期間を、ベンチマークとして説明すれば、次のようになります。
私の場合、1記事作成するのに、丸1日かかります。
他の仕事との兼ね合いもありますから、丸1日を当てることは不可能で、現実的には週1本のペースです。
私の場合は、書くのに慣れているので、一般の人よりは早いです。
ただ各記事は、相当入念に作り込むので、ちょっと過剰品質かも知れません。
ですので、皆さんのベンチマークとしても、週1本が妥当ではないか、と思います。
1人週1本をペースに、100記事までを、何人体制で、何か月で進めるのか、まずはスケジューリングして下さい。
1人で進めるのは、相当キツイです。あなたがフルタイムをライティングに充てるなら、週3本はいけるでしょう。ただ週5本は、かなりキツイです。
週5本できても、100記事までは4か月かかります。継続できる期間ではありません。
一時の気持ちの盛り上がりだけで、乗り越えられる壁ではないですから、習慣を作れるかどうかが、最大の成功ポイントです。
頑張るあなたに、三島由紀夫の言葉を贈ります。
不可能を可能にするのは、習慣と言う怪物である。
ステップ15.各種ソフトウェアの準備。
最後にオウンドメディア作成の上で、必須と思えるソフトを、ご紹介しておきます。
サイトのアクセスが増えたかどうか、どのページのアクセスが多いのか、色々な形でフィードバックがないと、指針も得られません。
モチベーションを維持する上でも、グーグルアナリティクスを導入することは、必須です。もちろん他のアクセス解析ソフトでも、構いません。
検索ワード毎に、上位表示されているかどうか、チェックするのに役立ちます。順位変動のグラフも表示されるので、必須のソフトと言えます。
毎日GRCでチェックをすれば、表示順位の変動が分かるので、いろいろな気づきも得られます。
● アイデアツリー
アイデアツリーは、エディタなので、文字を軽快に打ち込むことが出来ます。また階層構造で、記事を整理できるので、効率的な記事管理の点でも、欠かせません。
記事をワードプレスだけで保管すると、何かと不便ですし、万一の場合もあります。テキストベースで記事を保管し、サマリー等を整理する上で、アイデアツリーはとても役立ちます。
● Xマインド
マインドマップの作成ソフトウェアです。マインドマップについては、各種ソフトがあるので、別にXマインドでなくても構いません。
ただマインドマップという思考ツールは、記事の構成を考える時にとても役立ちます。記事作成に慣れないうちは、マインドマップは必須と言って良いでしょう。
● Kintone
サイボウズが提供するアプリを自由に作れるクラウドサービスです。自社の業務フローを自分でアプリケーション化できます。多くのライターさんをマネジメントするなら、このようなクラウド型のソフトが最適でしょう。
組織的に取組む場合、このような共有プラットフォームを持つことは、仕事の効率化にとても役立ちます。
まとめ。
ぜひ今回の説明内容を検討した後で、実際の記事作成に進んでください。記事作成の期間は、長期に渡ります。最初の100記事程度までは、アクセスアップはほとんど期待できません。
この期間は耐えるしか方法がないのです。だから必ず迷いが生まれます。
- このキーワード群で継続して、本当にアクセスは増えるのだろうか?
- このまま記事を書き続けて、本当に上位表示するのだろうか?
これを克服するには、事前にどれだけシッカリ企画したか、その自信がなければ乗り越えることが出来ません。オウンドメディアが成功するか否かは、実は企画にあることを忘れないで下さい。
最後に、もう1度、この言葉です。
「不可能を可能にするのは、習慣と言う怪物である。」
頑張ってください。微力ではありますが、陰ながら応援しています。