ここではマーケティング用語のCPOとは何か、なぜこの用語が重要なのか説明します。CPOを知らずに事業をするのは、自殺行為と言えます。それはCPOが、事業の運命を決めるからです。いったいどういうことか、ここでしっかり理解して下さい。
CPOとは何か?
CPOとは”Cost Per Order”の略で、注文1件あたりに必要となる費用です。
皆さんが注文を取ろうとすれば、広告を出したり、営業したり、何らかの販売活動が必要になります。この販売活動にかかる、注文1件当たりの費用をCPOと言います。
※ 類似用語解説
CPA:Cost Per Aquisition = CPOと同じ。
CPI:Cost Per Inquiry = 引合い(問合せ)1件当たりの費用。
なぜCPOは事業の運命を決めるのか?
私が「CPOを知らずに事業を立ち上げるのは、自殺行為です」と言っても、皆さんは「そんな大袈裟な・・・」と思うはずです。ただこれは決して、大袈裟な話ではないのです。
どんな方でも、物を売ろうとすれば、売値をいくらにして、材料費がいくらになって、・・・。これ位の計算はすると思います。自分の手元に商品がありますから、材料費は正確に計算できます。商品の制作にかかる時間も分かりますから、必要があれば労務費も出せるでしょう。
商品に関する費用は、目の前に揃うので数値になります。ところが販売は未来に向かった行動です。未来のことなので、その数値は予測でしか揃いません。少し知識があれば、「広告宣伝費は、売上げの10%を見込もう」と、考えるかも知れません。
ただ残念ながら販売にかかる費用(CPO)は、皆さんが思うより遥かに高額です。
計算方法はこの後で説明しますが、想像以上に高いので、CPOを知らずに起業すれば、ほぼ間違いなく赤字が続きます。それは売上げの伸び悩みとなって、最終的には不幸な結末に終わります。
本来CPOを知らずに、事業を起こすことなどあり得ないのです。ところが今やネット販売が普及し、資本金が少なくても何とかなる、という幻想が広がってしまいました。
確かにネット販売なら、店舗運営の費用は限界まで抑えることができます。ところが事業の立上げで、本当に費用がかさむのは、そこではなく販売活動の費用(CPO)なのです。
販売活動にどれほど費用がかかるのか、ここでイメージだけでも掴んでください。必ずいつの日か、あなたのお役に立つはずです。
CPOの算出方法
ネット通販の最もシンプルなモデルで、算出方法を説明しましょう。PPC広告を出して、自社サイトにアクセスを増やし、サイト上で販売するというモデルです。この場合、CPOは次のようになります。
- クリック単価:100円
- コンバージョン率:1.0%
- CPO:10,000円
クリック単価とは、PPC広告の運営会社(Google, Yahoo等)に、1クリック毎に支払う金額です。ここでは1クリックで100円かかると仮定しました。1クリック100円ということは、自社サイトに1回ユーザーを引き込むのに、100円かかるということです。
次にコンバージョン率ですが、これはサイトに何件のアクセスがあれば、注文が1件くるか、という割合になります。コンバージョン率1.0%とは、100回アクセスがあって注文が1回来る、と言う意味です。1回のアクセスに100円かかり、100回アクセスがあって1回の注文が来る、という仮定です。
そうすると1回の注文にかかるコストは、100x100で10,000円となります。これでCPOは10,000円、ということになります。まず最初に、広告モデルにおいて、CPOはクリック単価とコンバージョン率で決まるということを押さえて下さい。
参考までに計算方法を数式化すれば、次のようになります。
CPO = クリック単価 ÷ コンバージョン率
現実を踏まえて考える。
ここまでは計算方法を分かってもらうために、クリック単価100円、コンバージョン率1.0%、と仮定しました。ただ重要なのは現実の場合を、どう見るかです。
まず最初にクリック単価にしても、Webサイトのコンバージョン率にしても、単純にベンチマークが決まるものではありません。それは扱う商品によって変わりますし、競合の有無や事業環境によっても変わります。
一律の数字を出せる性格ではないので、ベンチマークを出すのは危険でさえある、とも思います。ただここであえて出すのは、「これ位の金額は必要になってくる」という意識を、持ってほしいからです。
このような趣旨で書いていますので、ここでダメだと言われたから、ダメだと安易に思わないようにして下さい。逆にここでOKだから、OKと言う訳でもありません。大事なのは考え方を知り、自分のCPOを意識してビジネスを展開することです。
クリック単価
クリック単価は、どんな検索ワードに入札するかによって大きく変わります。非常に乱暴に言えば、その範囲は50円~3,000円といったところでしょう。50円以下もあるのかも知れませんが、一応50円を最低ラインとしました。
この50円というのは、かなり楽観的にみた数字です。現実には100円程度を見込まないと、数字としては使えない気がします。ですので最低ラインを50円としつつも、ベンチマークは100円とします。
コンバージョン率
コンバージョン率は、Webサイトの能力を表す指標です。当然のことですが、扱う商品が違えば、コンバージョン率は変わります。また同じ商品であっても、注文数でカウントするのか、それとも資料請求の数でカウントするのか、こういった違いで数値が変わります。
また同じ商品であっても、サイト全体の動線設計、デザイン、コピーライティング等を含めた、サイトの出来栄えで変わります。ですのでコンバージョン率を一律に示すのは、無謀にもほどがあるのですが、常識的に見れば0.1%~2.0%と言ったところでしょう。
一応ベストレートを2.0%としましたが、これは滅多にないケースで、1.0%あればサイトとしては合格ラインです。ですのでベンチマークは、0.3%とします。年平均0.3%のコンバージョン率なら、現実的な数字と言えるでしょう。
CPO
- クリック単価:100円
- コンバージョン率:0.3%
- CPO:33,000円(33,333円)
一応計算を説明すると、コンバージョン率0.3%とは1,000回アクセスがあって3件の注文です。1アクセスに100円かかりますから、注文3つで100円x1,000回=100,000円です。注文1つ当たりは、3で割って33,333円となります。
無理を承知で出した数字ですが、注文1つ当たり33,000円です。
どうでしょう? 高いと感じましたか、それとも低いと思いましたか。私は決して高くない金額だと思います。経験上いろいろな業種でCPOを聞きますが、私のイメージは8,000円~50,000円です。この点からもCPO33,000円と言う金額は、1つの目安になると思います。
【注記】
もちろんこれは、広告モデルの計算です。自然検索で上位表示すれば、CPOはゼロになります。ただその場合でも、時間コストを十分に考慮する必要があります。今のSEOは一朝一夕に成果がでるものではありません。半年以上を費やす必要がありますから、そのコストは想像以上のものになります。
なぜ美味しいチーズケーキが売れないのか?
仮にあなたが、とても美味しいチーズケーキをネット販売するとしましょう。その粗利は、ホール売りで3,000円とします。そうするとCPO33,000円なら、初回販売で30,000円の赤字です。
お客さんを一人獲得するのに33,000円をかけ、その人から得られる粗利は3,000円ですから、利益はマイナス30,000円です。
この赤字を黒字に持っていくには、同じお客さんに11回繰り返して購入してもらう必要があります。リピート購入はお客さんが自分で動くわけですから、そこに費用(CPO)はかかりません。
チーズケーキの単品販売では、お客さんが11回リピート購入してくれて、収益がトントンです。これがビジネスとして成り立たないことは、もう説明不要かと思います。
CPO33,000円というのは、1つのベンチマークですが、決して非現実の数字ではありません。何の関わりもない人に商品を買ってもらうには、どんな低額の商品でも、これ位はかかるということなのです。
これは人が新しい人に接触することへの抵抗感なので、どんな商品でも最低これくらいのコストを見込んでほしいのです。CPO33,000円を踏まえれば、チーズケーキのビジネス化には、次のような手順を踏む必要があります。
- 委託販売してくれる他サイトを探す。
- 無料で広める方法を考える。
- 客単価が上がるよう、商品の種類を増やす。
- 広告の種類を知り、費用対効果の高め方を学ぶ。
- サイトのコンバージョン率の高め方を学ぶ。
他の収入がある時に、これらを副業で進めます。そして5番まで準備ができて、起業です。
なぜここまでを求めるかと言えば、ビジネスとしてやるには、家族の生活がかかるからです。利益がでなければ、精神的に追い込まれ、それは家族関係に影響します。ビジネスと趣味は違います。家族の生活をかける以上、準備に準備を重ねることは決して無駄ではありません。
良い商品だから売れる、は本当か?
私がコンサルティングをしていて、良く聞くのは「良い商品だから、売れる」という言葉です。「良い商品だから」「美味しいから」こういう気持ちはもちろん分かるのですが、これは完全に間違っています。
良い商品だから売れるのは、リピート購入の場合であり、初回販売では関係ありません。もちろん良い商品だから口コミで売れるということもありますが、本当に口コミが起きるような商品かどうか、怪しいことが多いです。
現実がどうなるかと言えば、良い商品と分かってもらうのに33,000円かかり、美味しい味を体験してもらうのに33,000円かかるのです。これを直視せずに、良い商品だから何とかなるという発想は、経営者の甘え以外の何物でもありません。
もちろん大事なのは33,000円という数字でなく、自分なりにCPOを数値化できることです。なぜならCPOを算出できることは、販売活動が目に見えているのと同じだからです。
- 広告を出すのにいくらで、そこからどれ位の注文くるのか?
- SNSで告知すると、どれくらいの注文率になるのか?
- 同じ商品でも、伝え方を工夫して注文率は良くならないのか?
販売手法のオプションを数多く準備して、CPOを予測して、実践しては修正、実践しては修正を続けていく。私はこれこそが経営者の仕事だと思います。
経営者の役割とは?
先日ある経営者から「私はネットのことは分からないので、専門家にお任せします」と言われました。たしかに広告の設定方法は分からないでしょう。そんなことは、もちろん知る必要もありません。
ところが曲がりなりにもネット集客で事業展開を考えるなら、フェイスブック広告とリスティング広告の違いは、知らないといけない。なぜならこれは、単なるネット広告の知識でなく、CPOを変える知識だからです。
もう一度「粗利>CPOが広告で成り立つ」意味を、考えてみてください。「粗利>CPOが広告で成り立つ」とは、広告を打てば打つほど、収益が上がることを意味します。お分かりでしょうか。この意味を俗っぽくいえば「笑いが止まらない世界」なのです。
要するに事業運営とは、なんとかCPOを下げる努力をし、最終的には「粗利>CPOが広告で成り立つ」ことを目指す活動と言い換えることが出来ます。
最後に、知ってほしいこと。
だいぶ長くなりましたが、改めて知ってほしい事があります。それは信用の価値についてです。今回ご説明したCPOは、信用の価値と言い換えることができます。なぜなら2回目の購入では、この費用はかからないからです。
「こんな美味しいチーズケーキなら、もう1回頼もう!」
リピート注文でCPOはゼロ円であり、それを可能にしているのは信用です。信用があるから、お客さんは自ら動き、CPOをゼロ円にしてくれます。逆に言えば信用をゼロベースで築くには、1人当たり33,000円かかるということなのです。
神はこの世を、とてもうまく作ったと思います。
信用の価値に気づいた人間が、生き残るように作ったからです。
今回は、ここまで。