USPをマーケティングに活かす、急所を説明します。USPとは何か? マーケティング上の役割とは? 作成時の注意点とは? この3点が内容です。これからマーケティングに取組む方や、USPを作ったけどシックリ来ない方は、ぜひ読んでください。
USPとは何か?
USPとは、Unique Selling Propositionの略であり、直訳すれば「独自の販売条件」です。一般に日本では、独自の強みを伝えるメッセージと説明されています。
最初に注意してほしいのは、USPとは「他社にない強み」ではない点です。非常に誤解しやすいポイントなので、よく例に使われるドミノピザで、説明しましょう。
▼ここから。
You get fresh, hot pizza delivered to your door in 30 minutes or less - or it’s free!
焼きたての熱いピザを、玄関まで30分以内に。それ以上待ったら、無料で構いません!
▲ここまで。
当時の宅配ピザでは、革新的なメッセージであり、ドミノピザの成長はこのUSPの力が大きいと、説明されています。
このUSPが顧客から支持されたのは、30分以内という明確な条件と、ダメなら無料という決意表明です。すなわち時間を守る点に強みを見出し、それを力強く打ち出したことで、顧客の心を掴んでいます。
強みを強調したメッセージですから、「USP=強みを作る」と考えるのは、決して間違いではありません。ただ日本語の「強み」は意味が広く、とても誤解しやすいのです。
誤解しやすいのは、「強み=他社に出来ない独自のポイント」と間違える点です。30分以内に届けることが、競合他社に出来なかったかと言えば、決してそうではありません。
宅配ピザであれば「すぐにお届けします!」と必ず宣伝します。これは当時も同じです。物理的に出来ないことではないのです。ただ30分という時間で具体性を出し、無料という決意表明をしたことで、独自の強みに高めているのです。
propositionとは、契約時の提案や条件という意味になります。ですので、他社が物理的に出来ることでも、強い約束をすることで、競合優位を築くことができる。ここに、USPの本質があるわけです。
マーケティング上の役割とは?
USPは、単なる競合優位ではない。
上述したように、USPは競合優位を築く手法ですが、単に競合優位だけを考えると、本質を見間違えるので注意してください。マーケティングの基本フレームは3Cです。それはUSPにも、当然のように当てはまります。
- 自社(Company): 自社の理念、設立背景、製品ラインアップ。
- 顧客(Customer): 既存客、見込み客、今後の顧客。
- 競合(Competitor): 同業者、異業種、関連業種。
3Cの詳しい説明は省きますが、マーケティング戦略を考える時は、まずこの3つに分けて、戦略を考えることになります。
USPは競合だけを考えて、作るものではありません。3C全てを考えて作るのがUSPであり、3Cのバランスを欠いたUSPは機能しないと思ってください。
中でも重要なのは、どの顧客を対象にするか、絞り込むことにあります。「顧客の絞込み」こそ考えの起点であり、絞り込んだ顧客を軸に、「自社」の環境と「競合」の状況を考えていきます。
USPの核心をズバリ言えば、それは顧客の切り落としなのです。ある顧客を切り落とすことによって、残った顧客に対して強烈なメッセージを作れるようになります。
私たちは、このようなお客を対象にしません。対象にするのは、このようなお客だけです。この構図が成立って、絞り込んだお客は、御社に真の意味で親近感(ロイヤリティー)を感じることになります。
ドミノピザの例で言えば、時間を守ることに価値を見出す顧客に絞ったわけです。言い換えれば、ドミノピザは「旨い!」を重視する顧客は、切り落としているのです。
販促活動に役立つ。
マーケティングには、4Pというフレームもあります。
- 製品(Products): どんな製品を企画するか?
- 価格(Price): どのような価格帯を選ぶか?
- 流通(Place): 製品をどのような流通ルートで届けるか?
- 販促(Promotion) どのように販売促進するか?
この中で、USPが最も役立つのは、販促活動です。
名刺、Webサイト、チラシに始まり、プロモーション動画、告知活動など、全てのメッセージは、USPを軸に組み立てます。USPがある場合には、これらを素早く、作成することが出来ます。
ただここでも、製品、価格、流通ルートを無視して良いわけではありません。バラバラに考えても、一貫性がなければメッセージは訴求力を持ちません。
- 自社の製品群にマッチしているか?
- 価格帯にマッチしているか?
- 流通ルートにマッチしているか?
こういう点にも、配慮する必要があります。
以上、USPのマーケティング上の役割をまとめれば、このようになります。
USPは競合優位を生み出す、強烈なメッセージです。ただそれは、マーケティング環境を総合的に考えた上で、作成される必用があるということです。
特に気をつけてほしいのは、強烈なメッセージに仕上げるには、絞込みが必要だという点です。
競合優位だけで考えても、絞込みは不可能です。なぜなら「絞込み=切捨て」である以上、総合的な検討を経ない限り、顧客を切り落とす「勇気」が得られないからです。
USP作成の注意点。
起業時の場合。
起業であれば、ゼロからのスタートですから、何かを切り落とすことに躊躇いはないでしょう。ただしUSPは事業の推進軸になりますから、ここで説明した点を踏まえ、十分な時間をかけて検討してください。
起業家なら考えるポイントは、自分のキャリアです。ゼロからのスタートと言っても、決してゼロではありません。自分の生き方や個性なども、強みになってきます。
自分の人生をたな卸ししながら、マーケティング視点で考えてください。
ビジネスが回っている場合。
ビジネスが回っている場合は、顧客の絞込みに躊躇いが生まれます。これは当然の話です。誰でも起きる躊躇いですから、まずは当然のことだと受け入れてください。決して「えい、これで決めてしまぇ!」とやらないように。絶対に長続きしません。
最初にすべきは、顧客をシッカリ分類することです。お客さんの中には、良いお客もいれば、悪いお客もいます。正直に自分と向き合い、お客を分類してください。
嫌なお客を切り落とすことで、USPが出来ないか? まずここから考えます。
その上で良いお客を実際に訪問して、「なぜ当社と、付き合っているのですか?」と、聞いてください。
USPを上手く作れない人は、ここで手を抜いています。自分の頭の中だけで、言葉遊びをしている場合が多いのです。
自分のことを自分で客観視するのは、非常に困難です。ある程度までは、誰でも分かります。ただ最後の「これで決める!」という決断が出来ません。
これに対して第3者視点が加わると、「やっぱり、この点か!」という確信が得られます。決して何か素晴らしいポイントを、求めるわけではありません。確信を得るために、お客に聞くと思ってください。
作ったUSPが、シックリ来ない場合。
シックリ来ない場合は、まずこれまでの説明をシッカリ踏まえているか、確認してください。USPは言葉そのものより、作成過程に価値があります。多面的に検討することが、USPへの自信になります。
何か奇をてらったことを、考えすぎているかも知れません。どこかに無理があれば、シックリ来なくて当然です。
多面的に検討した。
お客にも聞いてみた。
別に奇をてらったわけでもない。
もしそうなら、シックリ来ないのは杞憂と見るべきでしょう。USPはマーケティング上のメリットだけでなく、自社の行動指針として大きな価値を持ちます。
USPに自社の行動を合わせることで、時間をかけて馴染ませてください。USPだけでは、単なる言葉遊びに過ぎません。実務の継続的な裏づけがあってこそ、USPは真の輝きを放つのです。
以上、USPとマーケティングの役割について、ご説明しました。
ご参考になれば何よりです。