大企業と違い、人材と資金の限られた中小企業の場合、どのようなオウンドメディア戦略をとるべきか? オウンドメディアのメリットとデメリットを踏まえて説明します。対象読者はズバリ、中小企業の経営者です。
オウンドメディア戦略で、成功するために。
よし、うちもオウンドメディアを作って、アクセスを増やそう!
オウンドメディアという言葉が広まるにつれ、オウンドメディアに興味を持つ、中小企業の経営者が増えています。PPC広告に多額の費用を払っている経営者なら、効果の下落に危機感を持っているはずです。オウンドメディアは無料ですから、そこに魅力を感じるのは、当然のことだと思います。
また今のサイトにアクセスが少ないなら、「オウンドメディアを作ってアクセスを増やそう!」と思うのも自然なことです。あなたが読んでいるこのサイトだって、オウンドメディアです。当社の集客はこのサイトの力で回っていますから、オウンドメディアに取り組む方を応援したい気持ちは、誰よりも強いです。
ただしオウンドメディアには、デメリットだってあります。無料でアクセスが増えるというメリットだけでなく、デメリットもシッカリ理解した上で、正しい戦略を作ることが重要です。安易に取り組んで挫折することがないよう、まずはメリットとデメリットをしっかり理解してください。その上で、中小企業がとるべきオウンドメディア戦略を説明します。
(参考記事) オウンドメディアとは何か、明快に分かる!
オウンドメディアのメリットとは?
最初にオウンドメディアのメリットを説明します。中小企業の場合に絞れば、大きく5つあります。
メリット1: アクセス数の拡大。
まずはアクセス数の拡大です。オウンドメディアは個々の記事ページに、対象となるキーワードを割り振ります。月間検索ボリュームが50以下のニッチワードなら、SEOの競争は厳しくありません。記事内容がシッカリしていれば、短期間で上位表示されます。ニッチワードでアクセスは稼げませんが、それを100ページ位積み上げることで、サイト全体を検索エンジンが評価するようになります。
そして次に、ミドルワード、ビッグワードへと進みます。この時点からアクセスが拡大基調に入ると思ってください。ニッチワードで記事を積上げている時点とは、状況が一変します。記事を増やせば増やすほど、相乗的にアクセスが伸びます。これまで耐え忍んだ苦労が、報われる時です。急勾配を駆け上がるように、いけいけドンドンの状態に変わるでしょう。
このように、アクセスの拡大は短期に望めるものではありません。アクセスが増えるのは、オウンドメディアの大きなメリットですが、それは最低でも半年から1年かかることを、覚悟して下さい。
メリット2: メディア総体としての信用獲得。
アクセスアップに1年もかかるのか・・・、わしゃ諦めた! こう思う方もいるでしょうし、それはそれで1つの選択です。別に無理することもないでしょう。ただオウンドメディアに取組むメリットは、アクセスアップだけではありません。むしろ一番大きなメリットは、メディア総体としての信用獲得にあります。
どういうことかと言えば、お客の立場で説明した情報が100、200と記事になっているのを、ユーザーは目の当りにするわけです。それだけ労力をかけたサイトと、宣伝文句が並ぶペラペラのサイトと、どちらをお客は選ぶでしょうか。
オウンドメディアの本来の価値は、この信用獲得にあります。どのサイトから購入するか、その判断で一番大きな影響を与えるのは信用です。この信用を獲得できることこそ、オウンドメディア最大のメリットです。
メリット3:記事を読むことで得られる、親近感の獲得。
ウィキペディアのように無機質な記事内容では無理ですが、書き手の心情がシッカリ反映された記事なら、そこには親近感が生まれます。これはリピート訪問や先に説明した信用の獲得に繋がります。
このような親近感は、商品選定に検討時間のかかる商品、すなわち高額商品の場合には、大きな効果に繋がります。「○○商品を選ぶ時の注意点」「○○商品で知っておくべき最新の業界事情」こういう記事が宣伝を排除して書かれていれば、お客さんはそこから学ぶことになります。
商品やサービスに大きな優劣がなければ、いろいろ教えてくれた人から買おうと思うのが、人の心情ではないでしょうか。
メリット4: 競合の追随を許さない、継続した資産価値。
競合の追随を許さない、継続した資産価値も、オウンドメディアを構築する大きなメリットです。(1)競合の追随を許さない、(2)継続した資産価値、2つのポイントがあります。
(1) 競合の追随を許さないとは、一度オウンドメディアが構築されれば、簡単に競合は追いつけないということです。これまでの説明で分かる通り、オウンドメディアを作るには、時間がかかります。これはデメリットでもありますが、御社だけが大変なのではありません。競合他社だって同じように大変なわけです。だから先にメディアとして基盤を作れば、それは大きな競合優位になります。
(2) 継続した資産価値とは、広告のように掛け捨てでない、ということです。広告の場合、常に費用が発生します。これに対しオウンドメディアは、記事が出来れば、それは継続的に効果を出し、その維持費はほとんどかかりません。記事を積上げれば、それは累積して相乗的に効果を出します。分かりやすく言えば、駅前の一等地に「賃貸物件でお店を出す」のと、「自己所有でお店を出す」違いのようなものです。
メリット5: 雑誌・書籍等、リアル媒体への展開。
しっかりした内容の記事であれば、雑誌社や出版社から声がかかります。ネットだけの信用に留まらず、リアル媒体の信用も加わる、ということです。信じられない人もいるでしょうが、私が記事を書いたサイトの場合、その半数は出版社、雑誌社、TV局から声がかかっています。
なぜこうなるかと言えば、マスコミは常に情報を探しているからです。世間の注目を集める情報を探すのが、マスコミの仕事です。当然ネット検索をフル回転させますから、記事が上位表示していれば、それは記者の目に止まります。この流れがあるために、オウンドメディアを作ればリアル媒体へも、道が開けてくるのです。
オウンドメディアのデメリットとは?
それでは次にデメリットについてです。デメリットは大きく3つあります。
デメリット1: キーワード選定に、時間がかかる。
どのようなキーワードを狙ってメディア構築するか、これはオウンドメディア戦略で、最も大事なポイントです。ここがオウンドメディアの成否を決めると言っても、決して過言ではありません。このキーワード選定が厄介なのは、全ての作業がキーワード選定から出発する点にあります。一番大事な作業を一番最初にやるので、特に初心者の方は、高いハードルと感じてしまいます。
そしてこのキーワード選定は、メディアコンセンプトと密接に関係します。仮にWeb集客というテーマであっても、
- 対象読者をどの層に置くのか? 初心者か、プロレベルか?
- どこまでのテーマに絞るのか? アクセスアップだけか? 受注までカバーするのか?
- どのようなトーンにするのか? 楽しさを演出するか? 固い内容にするか?
このような点にまで、関係する話です。
また自分だけの思い込みで、キーワードを選定すると、お客の関心とずれる場合も多々あります。ですので誰か第3者の意見も聞きながら、検討するのが良いと思います。
キーワード選定は非常に大事なポイントなので、あえてデメリットとして冒頭に書きました。ただこれは、必ずしもオウンドメディアのデメリットではありません。ネット集客に取組むなら、キーワード選定は避けて通れない課題であり、逆にここを軽視するから、アクセスが集まらないとも言えます。
デメリット2: 記事作成が大変である。
記事作成が大変なのは、オウンドメディアのデメリットです。ただこれはメリットの項目で説明した通り、御社だけが大変なのではありません。大変なことは認識したうえで、現実的な計画を立てて進めるのが大切です。3つほど、ポイントを列記します。
1.リーダーを決め、リーダー自身が書けるようになる。
チームとして進める以上、リーダーになる人が必要です。リーダーは他の人が書いた原稿を見直したり、サイトにアップする作業をしたりするので、実際に自分が原稿を書けなければなりません。
2.作成ペースは、1週間に1本が目安。
社員さんが通常業務と並行して記事を書くなら、1週間に1本が限界でしょう。これより短期間で書こうとすれば、必ず記事の質に影響が出ます。またノルマ的に強制するのでなく、なぜ今オウンドメディアに取組まなければならないか、しっかり説明して、その重要性を共有することも大事です。イヤイヤながら書くのは、苦痛以外の何物でもありません。文章は必ず書き手の心情を反映しますから、注意して下さい。
3.書くことを楽しめるようにする。
書くのが大変なら、そこから何か成果が得られれば、それは喜びにつながります。私がニッチワードから書くように奨める理由は、ここに関係します。どういうことかと言えば、ニッチワードなら上位表示される可能性が高いわけです。それは直接アクセス増にはつながりません。ただ自分の書いた記事を、グーグルが1位表示させた現実は、初めての方にとっては、ことのほか大きな喜びなのです。「ほぉ、頑張って書けば、報われるんだ!」 この成功体験を、どんなに些細なことでも良いから、早い段階に体感することが、書くモチベーションを高めると思ってください。
以上3点、ポイントを列記しましたが、大変なのは記事作成だけでないことも、注意して下さい。読まれるメディアは文字の羅列だけで、成り立つわけではありません。
アイキャッチ画像は、記事全体のイメージを決めますから、良い画像を選び、加工修正することも必要です。またテキストは改行場所を調整し、ホワイトスペースをどの程度とるか、注意を払ってください。ホワイトスペースの量で、メディアの印象は変わります。高級感を演出する雑誌は、文字量に対してホワイトスペースが多いことを、忘れないで下さい。
デメリット3: 外部委託すれば、かなりな費用がかかる。
時間をお金で買おうとすれば、当然それなりの費用がかかります。1記事あたり、どれ位かかるかは、依頼するライターさん次第になるので、実際に相談して下さい。ライターさんの場合、その能力は本当にピンキリです。今後質の高いライターさんは、費用が高騰していきますから、早く良いライターさんを探した方が良いでしょう。オウンドメディアは、記事数が多いですから、重要ワードの記事は社内で書き、重要でないワードは、外部に委託する等の使い分けも必要になります。
以上、ここまでメリット5点とデメリット3点を説明しました。それでは最後に、中小企業がとるべき戦略を説明します。
中小企業がとるべき、オウンドメディア戦略とは?
アクセスアップより、まずは信用獲得のためと捉える。アクセスアップを最優先せず、まずは信用獲得のためと、目的意識を変える。
私はこれが中小企業にとって、最も重要なことだと思っています。なぜならアクセスアップを優先させると、どうしても記事の数を重視し、記事の質が疎かになってしまうからです。アクセスアップで、記事数は重要です。これは冷厳たる事実ですが、最初から記事数で走ると、どうしても記事の質が疎かになってしまいます。
既に説明したように、オウンドメディアのメリットは、アクセスアップだけではありません。コンバージョンアップに寄与する信用の獲得だって重要です。アクセス数を増やすことと、コンバージョンを増やすことは、Web集客の両輪であり、本来は優劣をつけるべきではありません。ただアクセスアップには、どうしても時間がかかります。記事数で100~200は必要です。これに対し信用の獲得は、優れた記事が20本程度あれば、可能です。
また今現在は、あまり記事の質に注目は集まっていませんが、今後は違います。今、多くの企業がオウンドメディアに動いていますから、1年もすれば記事数が多いのは当たり前で、上位表示の鍵は記事の質が左右することになります。これはほぼ確実な話だと思ってください。なぜ見通せるかと言えば、私の場合ネット関連なので、全て激戦区のキーワードで争っているからです。以前ならこの程度の記事なら負けることはないな、と思っていましたが、最近は違います。かなり手強い、良質な記事が増えています。
特に今、PPC広告でアクセスがあるなら、ライティングの練習のつもりで質の高い記事を20本程度作り、そこから数を重視するように変えていくのが良いと思います。
記事の数は大事です。そして最も大変な部分でもあります。ただ数を先行させて走るのでなく、まずは記事の質を重視して20本程度書く。これが中小企業の方にお奨めする、オウンドメディア戦略です。
以上、ご参考になれば何よりです。ぜひ頑張ってください。正しい努力は無駄になりません。陰ながら応援させて頂きます。