ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)の概要
ダイレクトレスポンスマーケティングとは、相手に返信という行動を促すマーケティング手法です。一般的なマーケティング(広告、販売促進)においては、商品の特徴を伝えることに主眼を置きますが、ダイレクトレスポンスマーケティングは単に伝えるだけでなく、返信という行動を促す点に最大の違いがあります。
一番分りやすい例を挙げれば、テレビショッピングのCMになるでしょう。「特別価格です!」「これもおつけします!」「それだけではありません!」 このようにきて、最後は必ず「お電話は今すぐ!」「オペレーターを増員してお待ちしています」「0120-XXX・・・・」と終わります。これが典型的なダイレクトレスポンスマーケティングです。
ダイレクトレスポンスマーケティングは、中小企業に新たな可能性を開く
一般的にマーケティングの重要性は、従来に比べ格段に認知されていますが、まだまだ一部のB2B企業の方、特に法人営業が主体の企業にとって、距離があるように思います。「マーケティングなんて、統計や数字をいじって格好つけるだけだよ。そんなことで売れるわけがない」と思われるかもしれません。
広告、宣伝、市場調査に留まらず、売れる仕組み作りが広義のマーケティングですが、確かにMBAで習うようなフレームワークや戦略論を持ち込んでも、中小企業では役にたちません。マーケットボリューム、ポジショニング、競合分析、こういった戦略思考は現状分析には役立ちますが、解決策の提示という点では、時間がかかり過ぎます。
私もマーケティングを習いたての頃、新製品の販売促進で詳細なアクションプランを立てましたが、営業会議はとても白けました。「確かにこの企画の趣旨は素晴らしい、・・・。で、結局いくら、売り上げはアップするの?」となってしまうのです。
ダイレクトレスポンスマーケティングは、営業に近い
ダイレクトレスポンスマーケティングはこのような分析思考でなく、具体的に何をしたらお客が行動するか、を考えます。身近なツールを使って、相手に行動を促すマーケティング手法であり、戦略というより戦術なのです。
具体例を出しましょう。あなたが新製品の販売促進を考えるとします。告知するために、見込客にダイレクトメールを出すとします。挨拶文と製品カタログを封筒に入れ、一斉に郵送します。
ダイレクトレスポンスマーケティングでも、やることは同じです。但し、細部が違います。
- どうすれば対象者の机の上に置かれるのか?
- どうすれば受け取った後で、封を切るのか?
- 最初にどんなコピー文を読むと、全体に目を走らせるのか?
- どんなアクション(電話をかける、FAXを返信する、メールを返信する・・・)を求めると、読み終わった後に行動するのか?
こういったミクロな行動を一つ一つクリアするため、細部に神経を払ってツールを作りこみます。通常のマーケティングが商品の良さを伝えるのに対して、ダイレクトレスポンスマーケティングは相手の行動を考えます。だからプロセスの細部まで、作りこんでいくのです。
これは考え方として、営業マンの思考に近いといえるでしょう。どんな話をすれば、お客が目を輝かせるのか? そのためには、どんな事例やサンプルを提示したら良いのか? 考え方は営業の延長上にあることが、お分かりいただけると思います。
ダイレクトレスポンスマーケティングの心臓部は何か?
それでは、いったい何が行動を引き起こすのでしょうか?
その心臓部は「言葉」です。
一例を挙げましょう。あなたは給油でガソリンスタンドにクルマを滑り込ませました。店員さんがあなたに尋ねます。Aさんは「オイルの点検をしましょうか?」と言葉をかけました。Bさんは「オイルの汚れが危険なレベルかどうか、チェックしましょうか?」と尋ねました。
A、Bどちらの方が、ボンネットを開けたくなるでしょう。統計上ではBの方が8倍以上の確率でボンネットを開けてしまいます。
もう一つ例を出しましょう。「この製品の活用事例集があるので、お送りしましょうか?」と尋ねる場合と「実は、技術がまとめた社内資料でトヨタ自動車の活用事例があるのですが、内緒で持ってきましょうか?」では、どちらを欲しがるでしょう。
言葉の使い方一つで、圧倒的に反応する確率は変わります。経験豊富な営業マンは「どのような人が」「どのような状況(心理)の時に」「どんな言葉を投げかければ」「相手が興味を持つか」を経験で知っています。
その経験知を統計的に検証して、ミクロのアクションに落とし込んでいく。これがダイレクトレスポンスマーケティングの真髄です。相手の心の動きを踏まえ、言葉とツールを使って、全営業プロセスを再設計する。それによって、圧倒的な差をつけることができるのです。